
昼は暑くて、朝晩はちょっと涼しい。かと思えば、急に蒸し暑くなったりもする。
5月から6月にかけての、この中間期って、なんだか難しい季節なんですよね。
今回のVoicyでお伝えしているのは、高断熱・高気密の家ほど見落とされがちな「排熱(はいねつ)」というテーマです。
断熱や気密とおなじくらい大事なのに、あまり語られない話。ぜひ、読んで実践してください。

家づくりの話だと、断熱・気密・日射取得って、ほんとうによく出てくるんですよね。
でも、ひとつ抜け落ちがちなのが「排熱」。簡単に言うと、家の中にこもった熱を、外へすてるという考え方です。
冬なら、入ってきた熱は宝物。逃がさないからこそ、あたたかい。ここに高断熱の意味があるわけです。
ところがこの時期、おなじ熱が、こんどは「在庫」になるんですよね。入りすぎて、ちょっと邪魔。
日中は窓から日ざしが入る。人がいて、家電が動いて、料理して、照明もつく。家の中では、どんどん熱が生まれてくる。高性能な家ほど、その熱を逃がさない。冬は最高だけど、中間期だとちょっと厄介、というわけです。
ここで「24時間換気があるから大丈夫」「熱交換器があるから平気」という声をよく聞きます。でも、換気と排熱は役割がぜんぜん違うんです。
換気は、空気をきれいに保つためのもの。二酸化炭素やにおい、湿気、化学物質を外に出して、空気の入れ替えをする仕事です。いっぽうの排熱は、たまった熱を捨てること。
お風呂で考えるとわかりやすいかもしれません。換気扇でじわじわ空気を入れかえることもできますが、ムワッとした熱気を一気に抜きたいときは、窓やドアを開けて風の通り道をつくりますよね。そのほうが、熱もこもった空気もスッと抜けていく。
24時間換気は、あくまで空気をきれいに保つのが役割。日中ためこんだ熱を短い時間で抜くところまでは、換気だけだとちょっと難しいんです。熱を逃がすのは「排熱」、ジメジメを抑えるのは「除湿」と、役割を分けて考えるのがコツなんです。

家の性能が好きな方なら、ηAC値(イータ・エー・シー値)はご存じかもしれません。
わかりやすく言うと、冷房のときに日射熱が家にどれくらい入りやすいかをあらわす指標です。
窓が中心ではあるんですけど、屋根や壁もふくめた家全体(外皮)で見るのがポイント。この値が小さいほど日射が入りにくく、日射をさえぎる性能が高いということになります。自分たちも、設計のうえでとても大事にしているところです。
ただ、ここがポイントで。ηAC値は「日射熱の入りにくさ」を見る指標であって、「入ってしまった熱の逃がしやすさ」までは見えていないんです。
窓を小さくして、日射遮蔽ガラスを入れて、軒もつけて、外部ブラインドもつける。それでも夏の日射熱はやっぱり強いので、熱はある程度は入ってきます。そのときに熱の出口がないと、中にストックされ続けて、エアコンがずっとがんばるしかなくなる。外は涼しいのにエアコン。なんだか、ちょっともったいない気がします。
高断熱・高気密の家って、いってみれば魔法瓶なんですよね。冬は、暖かいものを暖かいまま保てる。最高です。でも日射熱が入って、人の熱が入って、家電の熱が入って、フタは閉めっぱなし。それは魔法瓶のせいじゃなくて、出口がないだけなんです。
ここで気になるのが、これからどんどん蒸し暑くなる季節。排熱って、そういう時期にも関係あるの?という話です。
実は、夜風で排熱がうまくいくのは「外が涼しくて、湿度がそこまで高くない夜」なんです。だから本格的に蒸し暑くなって、外の空気そのものがジメジメしてくると、窓を開けても気持ちよくない。そういうときは、むしろ閉じて除湿やクーラーにするほうが快適です。
逆に、梅雨の晴れ間や、朝晩が涼しい日。こういう夜は、エアコンに頼りきらずに窓を開けて、こもった熱をスッと逃がしてあげる。 つまり今ごろの季節って、開ける日と閉じる日が混ざっているんですよね。その見きわめができると、暮らしがぐっとラクになるんです。

外が暑い、空気が悪い、騒音がある、湿度が高い。そんなときにしっかり閉じられる家って、すごく強いんです。守備力が高い。これはまちがいなく性能のよさですよね。
でも、閉じることしかできないと、ちょっともったいない。涼しい夜に、外の気持ちのいい冷気を使えないわけですから。
そこで大事になるのが、排熱設計という考え方です。下から冷たい空気を入れて、上から熱い空気を逃がす「重力換気」。家の中を風が通り抜けていく道。自分たちは「風の背骨」なんて呼んだりもしますけど、こういう設計がじつはすごく大事なんですよね。
数字の中に住んでいるわけじゃなくて、わたしたちは季節の中に住んでいる。そう考えると、やることはとてもシンプル。「暑い!」となったら窓を開ける。「風がないな」「ジメジメするな」となったらエアコンを入れる。これくらいでいいんです。
これは、高性能住宅を否定する話ではまったくありません。むしろ、本当の意味で快適にするために、という話なんです。
大事なのは、この切り替えが柔軟にできること。外を遮断する家ではなく、外を選べる家。その自由度こそ、本当の高性能なんじゃないかな、というお話です。

2006年入社から家づくり一筋。資産活用の視点と注文住宅営業で300件以上の経験を活かし、不安や迷いに寄り添う“家づくりのパートナー”。性能や素材を総合的に考え、「どんな暮らしをしたいか」を一緒に描き、最適な提案を行う。VoicyやYouTubeでも発信中。