
今回はセルロースファイバーの「断熱」に絞ってお届けします。
「セルロースファイバーってどうなの?」と聞かれると、つい「暖かいですよ」で終わってしまいがち。でも、これから家づくりを考える方にこそ、もう一歩踏み込んだ数値のリアルと施工の話を知ってほしいです。

断熱材の性能を見るとき、基本となる数字が2つあります。
ひとつは「熱伝導率」。熱の伝わりやすさを表す数字で、小さいほど熱を伝えにくく、断熱性能が高いといわれています。
もうひとつが「熱抵抗値(R値)」。実際にどれだけ熱を止めるかを見る数字で、「厚み÷熱伝導率」で計算します。
ここで大事なのが厚みです。同じ材料でも厚くすれば断熱性能は上がりますし、逆にどれだけいい材料でも、薄ければR値は出ません。素材の数値だけでは決まらない。これが断熱の入り口です。

ここで少し想像してみてください。火にかけたアツアツの鍋があるとします。この鍋は、取っ手まで金属です。目の前にふわふわの厚いタオルと、薄い手ぬぐいがあったら、どちらで取っ手をつかみますか?迷わずふわふわのタオルですよね。分厚いタオルのほうが熱が伝わりにくいことを、私たちは感覚で知っています。
その理由が「動かない空気」。
閉じ込められて動かない空気は熱をとても伝えにくい。タオルの繊維の中には、この動かない空気の層がたっぷり含まれているから熱くないんです。
逆に、濡れたタオルで熱い鍋をつかんだら…熱い!となります。空気の層が水に置き換わると、熱が伝わりやすくなってしまう。断熱の世界は、この「空気をいかに動かさないか」が土台になっています。
では、セルロースファイバーの数値はどうか。
熱伝導率はおよそ0.038〜0.040W/m・K。
決して悪くない数値ですが、最高峰ではありません。
下記の表のように、たとえばフェノールフォーム系の高性能ボードには熱伝導率0.02前後のものもあり、数値だけを見れば約2倍の差。セルロースファイバーは繊維系なので、高性能グラスウールなどと近い数値になります。
| 断熱材の種類 | 熱伝導率(W/m・K |
| フェノールフォーム系ボード | 0.02前後 |
| セルロースファイバー | 0.038〜0.040 |
| 高性能グラスウール16K | 0.038 |
※数値は参考値です
だから私たちは「カタログ上の断熱性能は上の下です」とわかりやすく正直にお伝えしています。

ただし、住宅の断熱性能は素材単体では決まりません。
壁の中には柱があり、筋交いがあり、コンセントボックス、配線、配管…と、実は障害物だらけの迷路のようになっています。ここで問われるのが断熱材の施工性です。
セルロースファイバーは吹き込みで施工する断熱材。
障害物の周りにも回り込んで充填できるので、断熱欠損(隙間)が出にくいのが大きな強みです。
考えてみてください。熱伝導率0.040と0.038、その差はわずか0.002。一方で、壁全体に数%の隙間が空いていたら?熱伝導率のわずかな差よりも、施工時の隙間のほうが実際の断熱性能に大きく響くことがあります。
ちなみにグラスウールも、性能とコストのバランスがいい断熱材で、素材そのものに欠点はありません。ただ、迷路のような壁の中に隙間なく入れるのは、かなり難しい。だからこそ、どの断熱材でも「きちんと施工できるか」が分かれ道になります。
施工まで含めた実効性能で見れば、セルロースファイバーは「上の中」といえる断熱材です。
吹き込み施工で大切なのが密度です。
オーパススタイルでは55kg/m³という基準で施工し、吹き込みが終わったあとに穴を開けて密度試験を行います。さらに目視と手で触って、隅々まで入っているかを必ずチェック。
密度が足りず沈下して隙間ができると、そこで空気が動いてしまい、断熱性能が落ちてしまうからです。壁の中でセルロースファイバーがずり落ちてこないような工夫も、私たちはいくつも仕掛けてあります。
断熱性能の数値が良い断熱材はほかにもあります。それでも私たちがセルロースファイバーに惚れ込んでいるのは、断熱性能が”9科目あるうちの1科目”にすぎないから。
調湿、防音、防虫…と、いろんな場面で活躍してくれる総合力こそ、このセルロースファイバー断熱材の本領です。
また、断熱材選びは数値だけでなく「壁の中でどう施工されるのか」にも、ぜひ目を向けてみてください。

2006年入社から家づくり一筋。資産活用の視点と注文住宅営業で300件以上の経験を活かし、不安や迷いに寄り添う“家づくりのパートナー”。性能や素材を総合的に考え、「どんな暮らしをしたいか」を一緒に描き、最適な提案を行う。VoicyやYouTubeでも発信中。