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セルロースファイバーは火に弱い?新聞紙なのに燃え広がらない理由【防火編】|Voicy #359

防火性能のある断熱材セルロースファイバー|オーパススタイル

新聞紙が原料のセルロースファイバー、防火性は大丈夫?

今回は、断熱材セルロースファイバーの「防火」についてです。
セルロースファイバーの原料は、新聞紙。そう聞くと、真っ先に頭をよぎるのが「え、紙なら燃えるんじゃないの?」という不安ですよね。今日はその不安に、正面からお答えしていきます。

 

結論:セルロースファイバーは「燃え広がりにくい」断熱材

先に結論からお伝えすると、セルロースファイバーは燃えます。
「燃えません」と言い切ってしまったら、それは正確ではありません。正しくは「燃え広がりにくいように設計された、紙の繊維」なんです。
セルロースファイバーは、新聞紙をそのまま粉々にして詰めたものではなく、細かく繊維化してふわふわの状態にして、そこにホウ酸などの燃えにくい成分を加えています。それもそのはず、家の壁の中に燃えやすいものをそのまま入れるわけにはいきませんよね。だから、断熱材として使うために、しっかり防火処理を施しているんです

 

セルロースファイバーの防火の特徴

その防火性を支えているのが、ホウ酸です。このホウ酸が、大きく下記の2つのはたらきをしてくれます。
①炎が燃え広がるのを抑えるはたらき。
②目に見えない「くすぶり燃焼」を抑えるはたらき。
まずは、炎が燃え広がりにくい仕組みから見ていきましょう。

 

防火の特徴①:燃え広がらない仕組み ― 表面が炭化して熱と酸素を止める

セルロースファイバーの防火性能 燃え広がりの抑える|オーパススタイル

なぜ燃え広がりにくいのか。それを知るために、まずは「ものが燃える条件」から整理してみます。火が燃え続けるには、燃えるもの・熱・酸素の3つが必要です。
普通の紙だと、火がつくとその熱で紙そのものが分解されて、燃えやすいガスが出ます。このガスに酸素が加わって火がつき、また新しい熱が生まれる。その熱がとなりの紙を分解して、次のガスを生む。こうして連鎖しながら、炎はどんどん広がっていきます。
裏を返せば、この連鎖のどこかで熱や酸素が届かなくなれば、炎はそれ以上進めません。

セルロースファイバーは、火がつくと表面が炭の膜に変わりやすいように設計されています。
表面が炭化すると、その奥まで熱と酸素が届かなくなり、内側まで燃え進めなくなる。分厚い木の塊が、表面だけ焦げて中まで火が通らないことってありますよね。あれと同じ現象です。「燃えない」のではなくて「燃えた後、炭になって奥を守る」。これが正しい表現です。
実際、セルロースファイバーの防火実験では、炎を直接あてても表面が黒く炭化するだけで、まわりまで火が回らない様子を見ていただけます。

 

防火の特徴②目に見えない「くすぶり燃焼」にも配慮

セルロースファイバーの防火性能はくすぶり燃焼にも配慮|オーパススタイル

セルロースファイバーに含まれるホウ酸のもうひとつのはたらきが、この「くすぶり燃焼」への配慮です。
バーベキューで、炭に火がついていないように見えたのに、風が吹いた瞬間にボッと燃え上がった経験はありませんか。あれがくすぶり燃焼で、炎が見えなくても内部がじわじわ燃えている状態のことです。
新聞紙や木質繊維みたいな素材は、この見えない燃え方にも注意が必要。セルロースファイバーは、パッと燃え広がる炎だけじゃなく、じわじわ進むくすぶり燃焼まで抑えるように設計されています。

 

焼き杉と同じ?違いは「炭化のタイミング」

焼き杉の外壁

余談ですが、「炭で守るなら、焼き杉と同じ考え方ですか?」と聞かれることがあります。考え方は、まさに一緒です。ただ、炭化するタイミングが違います。
焼き杉は、あらかじめ杉板を焦がして、先に炭化させておく外壁材。いわば、最初から炭の膜を装着済みの状態です。一方でセルロースファイバーは、万が一のときに表面が炭化する。どちらも「炭の膜で守る」という発想は同じです。

 

他の断熱材の防火性能との比較

では、セルロースファイバー以外の断熱材の防火性能はどうでしょうか?下記のように整理しました。

断熱材の種類 燃えやすさ・防火性 煙・ガスの特徴
セルロースファイバー(紙・繊維系) 素材自体は燃えるが、ホウ酸処理で燃え広がりにくい。表面が炭化して熱と酸素を遮る 燃えれば煙は出て、一酸化炭素も出ることがある。ただし石油系とはレベルが違う
グラスウール・ロックウール(鉱物系) ガラスや岩石が原料で、そもそも燃えにくい 比較的少ない
ウレタンなど(石油系) 石油系という性質上、火災時に強い熱を帯びやすい 濃い煙や刺激性のあるガスが出やすい

グラスウールやロックウールは、そもそも燃えにくい素材でできた断熱材で、セルロースとは立ち位置がちょっと違います。ウレタンなどの石油系は、性質上、火災時に強い熱を帯びやすくて、濃い煙や刺激性のあるガスが出やすい特徴があります。
ただ、誤解のないようにお伝えしておくと、セルロースファイバーも燃えれば煙は出ますし、不完全燃焼で一酸化炭素が出ることもあります。「安全な煙しか出ません」という話ではなくて、石油系とは燃え方や煙のレベルが違う、ということです。

 

防火性能を活かすカギは、やっぱり施工

セルロースファイバー施工の様子|オーパススタイル

そしてもうひとつ大事なのが、施工です。決められた密度で、隙間なく充填していく。これができていないと、ムラや偏りが生まれて、せっかく設計された防火性能を発揮しきれません。
さらに、防火を支えるホウ酸の含有量は、実は製品によってけっこう差があります。同じ「セルロースファイバー」という名前でも、中身はさまざま。どんなセルロースファイバーで、どう施工するのか。そこまで目を向けると、断熱・調湿・防音、そして防火まで、いろいろな役割がついてくる素材です。

 

セルロースファイバーは燃えるの?防火の仕組みを解説 まとめ

・セルロースファイバーは「燃えない」のではなく「燃え広がりにくい」断熱材
・ホウ酸処理で、炎の広がりと、見えない「くすぶり燃焼」の両方を抑える
・火がつくと表面が炭化し、炭の膜が熱と酸素を遮る
・同じセルロースファイバーでも、ホウ酸の含有量は、製品によって差がある
・性能を発揮するには、決められた密度で隙間なく施工することが欠かせない

火事は、自分の意図しないところで起こるものです。だからこそ、万が一のときにどれだけ被害を抑えられるかが大切になります。黒い煙とともに一気に燃え広がってしまうのか、それとも燃え広がりにくい壁が炎の進みをゆるやかにしてくれるのか。その差は、逃げるための時間の差として表れます。1分1秒を争う場面では、その数秒が命を分けることもあります。
本来の役割は、あくまで断熱。冬の寒さや夏の暑さから住まいを守るための素材です。その断熱材が、万が一のときには表面が炭化して炎の広がりを食い止め、逃げる時間まで稼いでくれる。ひとつの素材が暮らしの快適さと家族の安全の両方を支えてくれるというのは、すごいことなんです。

Author Profile

渡邉 尚哉
渡邉 尚哉
オーパススタイル株式会社

2006年入社から家づくり一筋。資産活用の視点と注文住宅営業で300件以上の経験を活かし、不安や迷いに寄り添う“家づくりのパートナー”。性能や素材を総合的に考え、「どんな暮らしをしたいか」を一緒に描き、最適な提案を行う。VoicyやYouTubeでも発信中。

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