
今回は、断熱材セルロースファイバーの「防音」がテーマです。
断熱ほど注目されにくいけれど、住んでから効いてくるのが音の問題。なぜセルロースファイバーが防音に強いのか、Voicyの放送をもとに、その仕組みをやさしくお伝えしていきます。
家づくりで断熱を調べる方は多いのですが、音はどうでしょうか。実は音って、住む前より「住んでから」気になってくるストレスなんですよね。
外を走る車、犬の鳴き声、雨の音、工事の音。暑さ寒さはエアコンである程度なんとかなりますが、外で起きている音は自分では止められません。だからこそ、家そのものに「音が入りにくい力」があるかどうかが大事になってきます。

音の正体は空気の振動です。外で車が走ると空気が震え、その震えが壁に当たり、壁が震え、壁の中の空気が震え、部屋側の壁まで震えて、室内に音として届きます。いわば空気の振動リレーですね。
ここでポイントになるのが、壁の中の空洞。壁の中が空っぽだと太鼓と同じで、音が響きやすくなってしまいます。つまり家の防音では、壁の中の空洞をいかになくすかが重要になってくるんです。

セルロースファイバーが防音に強い理由は、大きく3つあります。
①遮音:壁の中の密度で音を伝わりにくくする
密度が高く重みのある素材は、空気が振動しにくく音が先へ進めにくくします。セルロースファイバーの密度と遮音はセットで考えると分かりやすいです。
②吸音:繊維の迷路で音を弱らせる
セルロースファイバーは新聞紙をただ細かくしたものではなく、ふわふわの繊維までほぐした素材です。繊維が不規則に絡み合い、無数の小さな空気の通り道ができているので、音がまっすぐ進めず、繊維の中で迷子になります。その途中で音のエネルギーが少しずつ小さくなり、耳に届くころには角が取れたような、やわらかい音になっていくんです。これが吸音の考え方です。
③隙間のない施工:音の通り道を残さない
防音でいちばん怖いのは隙間です。コンセントまわりなどにちょっとした空洞があるだけで、そこが音の通り道になってしまいます。セルロースファイバーは壁の中に吹き込んで充填していくため、配線まわりや細かな部分にも入り込みやすく、音の通り道になる隙間を抑えやすいです。
遮音・吸音・隙間のなさ。この三拍子がそろっているのが、セルロースファイバーの防音の強みです。
断熱材ごとの防音の特徴を整理すると、こんなイメージです。
| 断熱材 | 防音の特徴 |
| セルロースファイバー | 遮音・吸音・隙間のない施工の三拍子がそろい防音効果を発揮 |
| グラスウール | 繊維系なので吸音効果は期待できる。性能を活かすには、隙間なく丁寧に施工することが大切 |
| ロックウール | 重みのある鉱物繊維で吸音・遮音とも優秀 |
| 発泡ウレタン | 断熱性や気密性は高めやすいが、吸音性は繊維系断熱材より弱い |
| XPS・フェノールフォームなど板状断熱材 | 固い板をカットしてはめ込む施工のため、継ぎ目や切断面に隙間が生まれやすい |
こうして並べると、音への強さは「繊維であること」と「隙間なく施工できること」がカギになっているのが分かります。
とはいえ、すべての音が消えるわけではありません。セルロースファイバーは、重低音や飛んだり跳ねたりして構造を伝わる振動音は苦手です。セルロースファイバーが得意なのは「空気で伝わる音」と覚えていただくと分かりやすいです。
実際に線路のすぐ近くで建てたお家では、特急が真横を通過しても音はかなり抑えられています。振動は感じるものの、空気で伝わる音への強さを実感できる事例です。

セルロースファイバーの防音は、特別な工事ではありません。断熱材として施工することで、防音面でもうれしい効果が期待できる。これが素晴らしいです。
寝室の間仕切り壁に充填して音のプライバシーを守ったり、夜勤明けに日中静かに眠りたい方の寝室に使ったり、マンションのリノベーションで採用したり。音のストレスが減ることは、睡眠や集中、そして心と体の健康にもつながっていきます。音は後から直すのがとても難しいからこそ、家づくりの段階で考えておきたいポイントです。
音のストレスは、住んでみて初めて気づくことが多いもの。だからこそ、仕組みを知ったうえで素材を選ぶことが、快適な暮らしへの近道になります。

2006年入社から家づくり一筋。資産活用の視点と注文住宅営業で300件以上の経験を活かし、不安や迷いに寄り添う“家づくりのパートナー”。性能や素材を総合的に考え、「どんな暮らしをしたいか」を一緒に描き、最適な提案を行う。VoicyやYouTubeでも発信中。