
今回のテーマは「夏の住宅性能の本質」です。
年々厳しくなる夏の暑さ。住宅会社を比較するとき、多くの方がまず見るのが断熱性能の数値です。ただ、夏の快適さはそれだけでは決まりません。数値の比較だけでは見えてこない、暑さの仕組みと3つの大切な視点をお話しします。

夏の体感を左右しているのは、輻射熱(ふくしゃねつ)です。太陽の日差しのように、電磁波として直接届く熱のことですね。
そしてもうひとつのキーワードが蓄熱。建物も外構も地面も、日中ずっと太陽の熱を浴び続けて、素材の中に熱をため込んでいきます。ため込まれた熱は、夕方になると輻射熱としてじわじわ放出されます。
西日が暑く感じる理由のひとつが、この仕組みです。夕方には建物やまわりのあらゆるものが一日分の熱をため込んでいて、そこから届く輻射熱が加わります。朝はその前が夜なので、まわりの温度が下がった状態から始まる。同じ日射でも体感が違ってくるわけです。もちろん、方位や日射の角度、外気温などの条件も関係しますし、東西の窓は低い角度から日射熱を受けやすく、日射遮蔽が難しい面もあります。
つまり夏の快適さを考えるなら、日射をどう入れないか、そして建物に熱をため込ませないか。ここまで含めて設計する必要があります。

夏の性能を考えるとき、大切にしたいのがこの3つの視点です。UA値とηAC値(イータエーシー値)は国の基準でも使われる外皮性能の指標、MRTは室内の温熱環境を考えるための指標という違いはありますが、どれも夏の暮らしに直結します。
1. UA値:断熱の土台
UA値は熱の逃げにくさを表す、いわゆる断熱性能の指標です。エアコンで整えた室内の温度をキープする土台になるので、もちろん大事。ただ、住宅の性能というとUA値ばかりが語られがちです。素材の厚みと熱伝導率がわかれば計算できて、比較も審査もしやすい「定規で測れる」指標だから。裏を返せば、夏の暑さに関わる要素の多くはUA値の外側にあります。
2. ηAC値(イータエーシー値):日射の入りにくさ
ηAC値は、冷房期に外皮全体からどれだけ日射熱が入るかという、平均的な入りやすさを表す指標です。小さいほど夏の日射が入りにくく、なかでも窓の影響が大きくなります。軒を出す、庇(ひさし)をつける、外付けブラインドを使う、窓の大きさを考える。手段はいろいろあります。ここで気をつけたいのが冬とのバランス。窓を小さくすればηAC値は良くなりますが、今度は冬のありがたい日射熱まで入らなくなって、暖房に頼る家になってしまいます。何を優先して何を調整するか、設計で考えるところです。
3. MRT:夕方の体感を左右する平均輻射温度
MRTは平均輻射温度のこと。壁や天井など、まわりの面の温度から人がどれだけ熱を受けるかという、体感に直結する指標です。建物が一日かけて熱をため込むと、夕方には壁や天井そのものが熱源になります。エアコンで空気を冷やしても、まわりの面が熱ければ暑く感じてしまう。この夕方のMRTをどれだけ上げないかが、本来の夏の性能と言える部分です。快適さには空気の温度や湿度、風、服装や活動量なども関係しますが、夏の夕方の体感を大きく左右するのがこのMRTです。
ちなみに、断熱材セルロースファイバーは熱をため込みすぎない熱容量を持っていて、熱の伝わりで時間稼ぎをしてくれる素材です。もちろん効果は厚みや密度、施工状態、壁や屋根全体の構成によって変わりますが、夏の住環境と相性の良い断熱材と言えます。

輻射熱への対策として大事になるのが遮熱(しゃねつ)です。アルミなど反射率の高い素材で、輻射熱を跳ね返す仕組みのことですね。
ただ、住宅業界では「遮熱は意味がない」と言われることがあります。理由は、過去の扱われ方にあります。遮熱が防げるのは輻射熱だけで、物質や空気を伝わる熱には効果がありません。 それなのに一時期、「これさえあれば断熱はいらない」と、断熱の代わりとして紹介されるケースがあったんです。当然、冬の寒さには対応できません。
この誤った扱われ方の影響で、遮熱そのものまで疑問視されるようになってしまいました。でも、遮熱は反射面が空気層に面するように施工することで、輻射熱を抑えてくれます。表現として正しいのは、「遮熱に意味がない」のではなく、「断熱の代用にはならない」ということ。断熱を土台に、遮熱で輻射熱を抑える。この組み合わせが基本です。

最近よく耳にするのが「今はどこも高性能だから、性能なんて変わらないですよね」という言葉。これは、どの数値をどう切り取って見せているかを性能だと捉えてしまっている状態です。
UA値、ηAC値、MRT。この3つの視点で夏を考えている会社かどうかで、暮らしはじめてからの体感は変わってきます。夕方に壁が熱くならないか、天井が焼けていないか、窓際が熱源になっていないか。そこまで設計思想で固めて、体感温度まで設計するのが、私たちオーパススタイルの考え方です。
実際に、お住まいのOBのお客様からは「数値だけで見ていた印象より、ずっと快適」という声をいただいています。エアコンだけに暑さ対策を押し付けず、建物側でできることを積み重ねているからこそ、数値以上の体感につながっています。
近年の夏は本当に暑く厳しいです。だからこそ、これから家を建てる方は、数値の比較だけで終わらせず、体感まで見据えた家づくりを考えてみてください。会社選びに迷ったら、夏の暑さをどう考えているか、この3つの視点で聞いてみるのがおすすめですよ。

2006年入社から家づくり一筋。資産活用の視点と注文住宅営業で300件以上の経験を活かし、不安や迷いに寄り添う“家づくりのパートナー”。性能や素材を総合的に考え、「どんな暮らしをしたいか」を一緒に描き、最適な提案を行う。VoicyやYouTubeでも発信中。