
8月1日・2日と8日・9日の2週にわたって、名古屋市中川区で内覧会を開きます。「バイクガレージと土間のある住まい」です。外観はすっきりとスタイリッシュで、シンプルなつくりの中に、お施主様のこだわりがしっかり詰まっています。
この家の打ち合わせは、「バイクガレージをつくりたい」というお施主様のご要望から始まっています。ほしいモノではなく、そこでやりたいこと。今回は、この要望の立て方についてお話しします。テーマは「暮らしを楽しむ家とは何か」です。

暮らしを楽しむと聞くと、お祭りやお祝い、旅行や外食が浮かびますよね。ただ、わたしたちの「楽しむ」は、それだけではないと考えています。
日々の掃除や食事。家で少し仕事をする時間。眠くなって昼寝をする時間。子どもとのなんでもない時間。この一つひとつを「いいな」と感じられるかどうか。それが暮らしを楽しむということです。
わたしたちもこの言葉をよく使います。ただ、中身を説明しないと、ふわっとしたまま流れていきます。そこで、具体的な話をひとつ。
わが家では毎年夏になると、庭に大きなプールを出します。4.5メートル×2.5メートル。前の日の朝から入れ始めて、いっぱいになるのに半日かかります。
当日は子どもたちが大喜びで遊びます。父親であるわたしはプールに入らず、見守りながらその周りをお掃除。プール横のタイルデッキの汚れが気になって高圧洗浄機を出すと、これがなかなか止まりません。気づけば一日が終わります。
暑いので、途中で頭から水をかぶったり、子どもにかけられたり。濡れたまま日陰に椅子を置いて座ると、風が抜けて気持ちいい。この庭で過ごす時間を楽しみたくて、設計のときにあえてつくった日陰です。プールにはテントをかけて、子どもが遊ぶ様子をぼんやり眺めます。
手間はかかります。それでも、こんな一日が楽しい。掃除も草取りも、こうした何気ない時間も、暮らしを楽しむことの一部です。

家を建てるのは、器をつくることです。暮らしは、その器の中で毎日何をするか。
打ち合わせで出てくる要望は、大きく2つに分かれます。
・名詞の要望・・・モノの名前です。最新型の衣類乾燥機がほしい。アイランドキッチンがほしい。など
・動詞の要望・・・やることです。洗う。磨く。育てる。食べる。眺める。座る。絵を描く。など
名詞の要望が悪いわけではありません。乾燥機で洗濯物がふわふわに仕上がるのは、それだけでうれしいことです。大事なのはその先です。乾燥機で浮いた時間に、何をするのか。そこまで考えると、要望は自然と動詞に変わります。
やりたいことをたくさん持っている方ほど、話が動詞になります。暮らしがはっきり見えているぶん、要望も具体的になる。遠慮してまとめてしまうほうが、かえってもったいないです。
たとえば「ホテルライクな家がほしい」。これは名詞の要望です。見た目は再現できます。ただ、そこで何をするかまでは決まりません。
反対に、庭で子どもがプールに入れて、大人は日陰で涼める。これが叶うと、混んだ行楽地にわざわざ出かけなくても、家で十分に楽しめます。これもホテルライク。動詞から組み立てたホテルライクです。
土地選びも同じです。「プールが置ける庭、いいですね」と言われることがあります。ただ、それは広い庭のある土地を選んだから叶っているだけで、特別なことではありません。
土地探しでは、名古屋市内で駅から徒歩何分、という条件を先に固める方がとても多くいらっしゃいます。もちろんそれも一つの正解です。ただ、庭で子どもと遊びたいのなら、その要望を軸に置いてみる。少し郊外まで範囲を広げると暮らしがどう変わるのか、一度見てみる価値はあります。何を優先するかは、やはり「そこで何をしたいか」から決まります。

ここで、暮らしを楽しむヒントとして、日々の営みを6つの動詞で捉える考え方をご紹介します。
その6つが、
・整える
・作る
・育てる
・直す
・眺める
・分かち合う
です。
この6つが暮らしの中にあると、住んでいて楽しいと感じられたり、暮らしを楽しむヒントになったりするそうなんですよね。
どれも、特別なことではありません。
掃除をして家を整える。料理やDIYで何かを作る。植物や子どもを育てる。傷んだところを直す。庭や空、家族の様子を眺める。食事や時間を家族や友人と分かち合う。
普段の一日の中にあるものばかりです。
家づくりの要望を書き出すときは、この6つの動詞に当てはめてみてください。そこで何をしたいのか、どんな時間を過ごしたいのかが、少しずつ見えやすくなります。
昔の人は暮らしを楽しんでいた、とよく言われます。ただ実際は、今ほど家電や道具もなくて、家でやることが多かった、というほうが近いかもしれません。
今は暮らしが便利になり、家で手を動かす機会も少なくなっています。そのぶん、お祭りや旅行のような特別な日に楽しさを求めたくなる、ということもあるのかもしれません。
京都の町屋に住む方に話を聞くと、一年中やることがあって暇な日がないそうです。夏はこれを出して、冬はこの支度をして。手はかかりますが、日々の暮らしに密度があります。
同じ手を動かすことでも、受け取り方は人それぞれです。庭の草取りひとつが面倒な作業になる方もいれば、きれいになった様子を見て気分がいい、と感じる方もいます。料理や庭仕事、片づけを楽しめる方にとっては、そうした時間の一つひとつが暮らしの楽しみになります。
手のかからない住まいを否定するつもりはありません。無味無臭の暮らしが心地よいなら、それも一つの選び方です。ただ、家で過ごす時間を楽しめる余白があると、日々の受け取り方は変わってきます。わたしたちは、その余白を設計に取り入れています。

会場は、バイクガレージと土間のある家です。何を置くかではなく、そこで何をするか。その考え方が形になった家を、そのまま見ていただけます。素材感も見どころです。
そして、この時期です。とにかく暑い8月に、家の中がどれだけ快適か。足を運んでいただければ、すぐにおわかりいただけます。外の暑さと家の中の違いも、体感の一つとして確かめてください。
家は、暮らしを入れる器です。器の形だけ決めても、中身は決まりません。8月の中川区内覧会では、「趣味のバイクを触りたい」という一つの動詞から始まった家をご覧いただけます。ガレージに立って、土間に座って、ここで何をしている自分が浮かぶか。ぜひ確かめにいらしてください。

2006年入社から家づくり一筋。資産活用の視点と注文住宅営業で300件以上の経験を活かし、不安や迷いに寄り添う“家づくりのパートナー”。性能や素材を総合的に考え、「どんな暮らしをしたいか」を一緒に描き、最適な提案を行う。VoicyやYouTubeでも発信中。