
家づくりを考えていると、最近「ナフサ」という言葉をニュースで目にする機会が増えてきました。「ナフサが不足って何?なんだか大変そうだけど、家づくりと関係あるの?」と感じている方も多いのではないでしょうか?
2026年4月7日 第333回Voicy放送では、今起きていることを工務店の視点から整理し、これから家を建てる方がどう考えればいいのかをお話ししています。不安を煽るのではなく、冷静に一緒に考えていきたい内容です。

まず「ナフサって何?」というところからご説明します。
ナフサは、原油を精製する過程で取り出される石油製品の一種です。ガソリンや灯油とは違って、主にプラスチックや合成樹脂、接着剤などの「原料の種」になるもの。日常のあらゆるものに関わっているんです。それが、なぜ今問題になっているかというと、2026年2月から激化した中東情勢によってホルムズ海峡の物流が大きく滞り、ナフサが日本に入ってこなくなりつつあります。
日本は原油輸入の約94%を中東に依存しており、しかもそのうちホルムズ海峡を経由する割合が約90%にのぼります。これは他の国と比べても突出して高く、世界の先進国の中でも「最もホルムズ海峡リスクの影響を受けやすい国」と言えます。
家づくりの現場で使うものを見渡すと、意外とナフサが関わっているものがたくさんあります。
・断熱材(ウレタン・ポリスチレン系)
・防水シート
・接着剤
・シンナー
・塗料
・コーキング材
など、これらはどれも、現代の家づくりに欠かせないものばかりです。中でも断熱材は、半分空気のようなかさばる素材のため在庫が難しく、受注生産に近い形になりやすい。だから価格への影響が出やすいんです。
下記の表のように建築に関わる幅広い資材で価格改定が相次いでいます。
| 資材 | 用途 | 値上げ幅 | 適用時期 |
| プラスチック系断熱材 | 床・基礎・外壁の断熱 | 約40%値上げ | 2026年4月1日出荷分より |
| 防水ルーフィング | 屋根の防水下地 | 約40%値上げ | 2026年5月1日出荷分より |
| 塩化ビニル管 | 給排水配管 | 12%以上値上げ | 2026年5月7日出荷分より |
| ポリエチレン管 | 給水・給湯配管 | 20%以上値上げ | 2026年5月7日出荷分より |
| 塩化ビニル樹脂 | 壁紙・床材・窓枠などの原料 | 1kgあたり30円以上値上げ・供給制限 | 2026年4月1日納入分より |
ただ、ここで冷静に整理したいのは、「建築コスト全体が同じ幅で上がるわけではない」ということ。影響するのはあくまで“ナフサが原料の資材”に限った話で、それが全体の工事費に占める割合によって最終的な影響は変わります。たとえば全体の10%を占める資材が40%上がれば、全体への影響は4%というイメージです。
SNSやYouTubeでは「全部終わり」みたいな表現も目にしますが、一個一個冷静に整理していくことがすごく大事。パニックにならずに情報を見ていきたいです。
価格の高騰以上に現場で問題になりつつあるのが、資材が物理的に届かない状況です。断熱材・防水シート・シンナーなどは在庫が難しい性質上、受注から現場への供給に時間がかかりやすい。
さらに今は、ナフサから作られる製品について、医療用途(透析チューブ・輸液バッグなど命に直結するもの)が優先されており、住宅資材は後回しになりやすい状況があります。
特定の部材が一つでも届かなければ、設備の設置工事が全体的に止まってしまうことがある。これが今起きている「工期遅延」可能性の実態です。

歴史的に見ると、日本は過去に2度、大きなオイルショックを経験しています。
1回目は1973年(昭和48年)、第四次中東戦争をきっかけに原油価格が急騰した第一次オイルショックです。「紙がなくなる」という噂が広まり、全国のスーパーからトイレットペーパーが消えた、あの頃です。
2回目は1979年、イラン革命を発端とした第二次オイルショックです。このときは社会はパニックにならなかった。1回目を経験していたから、過去の教訓を生かして速やかに対応できたとされています。
ここから言えるのは、「人も社会も、環境に順応していく」ということ。値上がりは嫌だし、不確かな状況は不安です。でもそれでも社会は動いていきます。今いちばん避けたいのは、情報に振り回されてパニックになること。「行動は慎重に、気持ちはポジティブに」という姿勢が、この時期をうまく乗り越えるコツかなと感じます。

家づくりをこれから考えている方へ、少し踏み込んだ話をさせてください。
「こんな状況なら、1〜2年待ったほうがいいですか?」というご質問を、最近よくいただきます。気持ちはすごくわかります。でも、建築コストは、ここ数年ずっとゆるやかに上がり続けているんです。今回のナフサ問題は、その上昇トレンドの中で一時的に急上昇する局面にあたります。急騰のあとは「高いところで落ち着く」ことが多く、「急騰前の水準には戻らない」というのが過去の傾向です。
1〜2年待てばコストが下がるか、というと、そう簡単ではないんです。待っている間にも物価は動いていますし、そこからまた準備を始めると実際の着工は3〜4年後になってしまうこともある。
ただ、「今すぐ急いで決断してください」とも違います。
特にまだ打ち合わせを始めたばかりという方は、ゆっくり進めている間に今の混乱が落ち着いている可能性もあります。打ち合わせには8ヶ月〜10ヶ月かかることも珍しくないので、今から動き始めること自体は決して焦りすぎではありません。
一方で、「賃貸のまま待とう」という選択についても、賃貸の家賃そのものも上昇傾向にあります。「買わなければ安全」というロジックも、今はそう単純に成り立ちにくくなってきています。

「オーパススタイルの家は、今回の影響をどう受けるの?」そう気になっている方もいると思いますので、正直にお話しします。
断熱材に関していえば、多くの一般住宅で使われているウレタンフォームやポリスチレンフォームといった石油由来の断熱材。これらはまさに今回値上げの直撃を受けているもので、種類によっては40%前後の価格改定通知が届いています。
私たちが採用しているのはセルロースファイバーという断熱材です。
原料は古新聞や古紙を再利用したもので、石油由来の成分をほぼ使っていません。断熱材という工事全体でも比重の大きい工程で、ナフサ由来の資材への依存度が低いのは、今の状況においてひとつ心強い部分だと感じています。
構造材についても同様です。
柱や土台には国産無垢材を使った「緑の柱(ハウスガードシステム)」を採用しています。プラスチックや樹脂のようなナフサ由来の素材とは成り立ちが異なります。
床材に使っている無垢材も同じく木材由来で、石油系の合板フローリングとは異なります。
仕上げの塗り壁も、石灰・土などの自然素材が主体で、石油系の塗料や壁紙とは成り立ちが違います。
こういった素材をひとつひとつ見ていくと、家づくりの主要な工程において石油由来の資材への依存度が比較的低い設計 になっていることがわかります。
ただ、正直に言うと「影響がゼロ」とは言えません。
防水シートや接着剤、配管まわりなど、どの工務店でも使わざるを得ない石油由来の資材はあります。そこへの影響は私たちも受けます。
それでも、家づくりの中でウェイトの大きい断熱材の工程でナフサ依存度が低い設計になっていることは、他と比べると影響を受けにくい部分として、お客様にお伝えできることのひとつです。
こういった素材の選択は、今回のような事態を見越していたわけではなく、「自然素材で長持ちする家をつくりたい」というずっと変わらない考え方からきています。ただ結果的に、その積み重ねが今の状況で意味を持ってきているのかなとは感じています。
ご不安を感じている方も多いと思います。
正直なところ、私たちにもコントロールできない部分はあります。資材の状況も、世界情勢も、思い通りにはならない。それはお客様も私たちも同じです。
ただ、だからこそ一緒に考えながら進んでいきたいと思っています。状況が変わったときは、できる限り早くお伝えするようにします。何か気になることがあれば、遠慮なく相談してください。

今回のナフサ問題は、資材の値上がりも、工期への影響も、まだはっきりしない部分が多い。
ただ、過去のオイルショックでも社会は順応してきました。一個一個冷静に整理しながら進んでいくこと。それが今この時期にできる、一番大切なことだと思っています。
焦って動く必要はありません。でも、待てば好転するとも言い切れない。正しい情報を持ちながら、自分のペースで着実に準備を進めていく。何か気になることがあれば、いつでも相談してください。

2006年入社から家づくり一筋。資産活用の視点と注文住宅営業で300件以上の経験を活かし、不安や迷いに寄り添う“家づくりのパートナー”。性能や素材を総合的に考え、「どんな暮らしをしたいか」を一緒に描き、最適な提案を行う。VoicyやYouTubeでも発信中。